早稲田大学創立125周年記念シンポジウム
 ビジネスを変える、社会が変わる〜ザ・ボディショップが創る「キレイ」な世界〜 写真
10月30日(火)早稲田大学大隈小講堂において、早稲田大学創立125周年記念シンポジウム「ビジネスを変える、社会が変わる〜ザ・ボディショップが創る「キレイ」な世界〜」が開催されました。実はこのイベントは、この日程で来日予定だった創業者のアニータ・ロディックが次世代のリーダーとなる学生たちに語りかけ、「ビジネスを通して、社会を変革する価値観」を知ってもらおうと、早稲田大学平山郁夫記念ボランティアセンター(WAVOC)との共催で準備されたイベントでした。9月にアニータが急逝した後も、アニータの遺志を継ごうと、WAVOCはじめパネリストなど関係者の方々のご厚意により、この日を迎えたのでした。

第1部では、LOHASを日本に広めたCSR有識者、株式会社イースクエア代表取締役社長のピーター D. ピーダーセン氏による基調講演「Anita Roddick-A true business pioneer(アニータ・ロディック 本当のビジネス・パイオニア)」です。アニータが遺したザ・ボディショップのユニークなビジネス・スタイル、価値観を説明してくださいました。

第2部では、ピーダーセン氏をファシリテイターに、4名のパネリストを迎え、パネルディスカッションです。青山フラワーマーケット社長の井上英明氏カフェグローブ・ドット・コム取締役・ファウンダーの青木陽子氏、早稲田大学人間科学部の吉川舞さんに、ザ・ボディショップ代表の岩田松雄が加わりました。新しい価値観を創って来られた方々です。今のビジネスを 始められたきっかけ、そのときの気持ちなど、とても元気づけられるような興味深いお話が続きます。
基調講演・パネルディスカッションの詳細

ピーターD.ピーダーセン氏 ■ 基調講演
「ANITA RODDICK A true business pioneer」 
ピーターD.ピーダーセン氏

アニータがどんなメッセージを私たちに遺したかについてもう一度考えてみたいと思います。アニータは、人々の心を変えていくような CSR、環境の取り組みの見本を示した人ではないかと思っています。
You can change the world with a little money and a lot of passion.
1976年、わずかな持ち資金ながら、溢れるパッションをもって、アニータはザ・ボディショップ第一号店をブライトンに開きました。その後、54カ国、2000を超える店を開き、ビジネスを通じて何百万人もの人々の心に影響を与えました。アニータのようにミッションをもちながら妥協することなく、自分のメッセージ、理念、スピリットを通し、ビジネスを成功させた人は少ないと思います。

Don’t make new products, set new standards
ザ・ボディショップ、パタゴニア(アウトドア衣料)、ベン&ジェリーズ(アイスクリーム)。これらの企業は新しい製品を作るだけではなく、新しい基準、価値観を創り出した企業です。世の中を変えていく新しいスタンダード、価値観を提示したことは、アニータが行った最も大きなことだと思います。

The Social Purpose Enterprise.That is “the meaning of business”
ビジネスをやっていく意味合いとは何か?アニータは「社会目的事業」を創り出し、成功させたのではないでしょうか。倫理的なビジネスの先陣を切ったのはアニータだと思います。

From shareholders to stakeholders
アニータは90年代から、株主の利益ありきではなく、従業員、コミュニティ、顧客、取引先などの利益も考慮した持続可能なビジネスを目指しました。今ではステイクホルダー経営という概念はビジネス界の一般的こととなりつつありますが、大切なのは誰が本質を追求し、最初に行ったかということではないでしょうか。

Does killing animals make us beautiful?
アニータ・ロディックは正しいと思ったこと、例えば化粧品の動物実験反対について、大手化粧品などから批判を浴びながらも貫き、今では彼女の主張がヨーロッパのスタンダードになりつつあります。これもアニータの大変大きな功績のひとつです。

Trade, not aid
アニータは、途上国や先住民の人々と直接自分が交渉して、援助ではなく取引を行いました。今や常識となりつつあるフェアトレード、マイクロクレジットの考え方を、自分の会社という媒体を使って実践したのがアニータだと思います。

Don’t believe you can succeed the first time
大事なポイントは、何かをやろうとするときに、一回目で成功しようとは思わないでくれということです。アニータも最初はレストランやホテルの事業で苦労して、銀行でも融資を渋られ、苦労の末ザ・ボディショップを立ち上げました。

There is only your inner power and positive spirit
社会通念や周りの人に振り回されずに、最後は自分の中にあるパワーとスピリットを大切にしてほしいと思います。

“Honesty is the best image”
ほとんどの経営者は、最初に立てた計画が楽観的過ぎるので大変苦労することになります。しかし、正直で表裏がないと思われる人は、必ず人々がサポートします。アニータも正直過ぎるが故に挑発的になったとも言えます。私たちもぜひ、アニータの精神を受け継いでいきたいと思います。

■ シンポジウム「ビジネスを変える、社会が変わる」

ピーダーセン氏:まず、起業家のみなさんに、起業して何を変えてきたのか教えていただきましょう。

青木氏青木氏:私が起業したのはアニータがきっかけでした。私はアニータの大ファンでしたが、女性誌の編集をやっていた時にアニータを取材する機会を得ました。当時、環境問題を伝える企画が通らない、読者より広告クライアントの方を向いている女性誌に憤りを感じ、アニータに相談したところ、「あなたの残り時間を最大限に有効に使いなさい」と言われて抱きしめられました。99年にカフェグローブ・ドット・コムの会社をはじめましたが、出版社に勤めていたときよりやはりやり甲斐も大きいですし、女性のメディアに新しい方向性の一石を投じたことができたのではないかと思います。

ピーダーセン氏:「怒り」から起業したとはアニータと同じですね。怒りから社会を変えたいということもアニータの重要なメッセージです。ザ・ボディショップのリップカードと同じで、我々がスピークアウトしないと、社会は変わらないですね。

井上氏井上氏:早稲田大学を出てニューヨークの会計事務所に就職しましたが、一年経って、自分に向かないと思いました。「他人の銭勘定ではなく、自分でビジネスをやろう」と起業しました。最初は、ビジネスをやるには日銭を稼がなくてはという打算的な考えから、とりあえず花の小売をスタートさせました。その後、パリのホテルの何もない部屋で花の必要性を実感し、「こうなったら花咲かじじぃになってやろう」と本腰を入れるようになりました。

都会は直線が多過ぎます。都会の写真を撮ると、定規とコンパスがあれば、すべてなぞることができそうですが、これではいけないと。なぜなら、自然の世界には直線はありません。右脳系の自分はまず身をもって感じ、感じてから考えだしました。

青山フラワーマーケットは、花を手にとってもらえる花屋、プライベートでデイリーな花を売ることを心がけています。お客様が自分で買って、毎日身近に花を見ていただきたいので、鮮度、色合いに気を配っています。

シンポジウムの様子ピーダーセン氏:友達のおばさんのお見舞いに花束をもって行こうとしたら、農薬が使われている花は集中治療室に入れてはいけないと言われました。青山フラワーマーケットの花はいかがですか?

井上氏:残念ですが、一本一本の生産方法までは確認できていません。オランダ発祥の「MPS」という認証システムがあり、日本でも今年3月からスタートしました。食の世界で行われていることを、僕らもこれから花の生産者の方々と一緒に取り組んでいきたいと思います。

青木氏:地元の食べ物を推奨するフードマイルのように、フラワーマイルをつくってほしいです。

井上氏:中国雲南省の昆明は遠いけれども常春なので花を育てるために燃料を焚く必要がありませんし、台風や地震の心配もないので施設も非常に簡単ですみます。しかし、運ぶ時には、多くのエネルギーがかかってしまうので、どうなのかな?と考えています。

青木氏:フェアトレードなどもできたら素晴らしいですよね。

ピーダーセン氏:新しく販売される年賀状がプラス5円で自然エネルギーへの投資を行うように、花束に50円プラスすることでCOを相殺することを仕掛けていけば、お客様と新しいコミュニケーションができるのではないでしょうか?

井上氏:精神的な余裕がないとお花を飾ることができないので、僕らのお客さまは心が豊かな方が多いです。深いところで環境に対して相通じる方が多いと思います。

吉川氏吉川氏:ルーツは4年前にカンボジアに行って、カンボジアに恋しちゃったことです。私の好きなカンボジアは他の方々の目に触れていないので、もっといいところを見てもらったら、もっとカンボジアを好きになってもらえるのにと思うようになりました。この布はカンボジアで買ったのですが、本当はタイかベトナムなどで安く作ったものであり、本当のカンボジア・シルクではないです。それ以外でも、現地では果実のみが食べられるカシューナッツが、立派な機械のあるベトナムに送られてナッツの部分が取り出され、「ベトナム産のカシューナッツ」になっています。カンボジアは観光立国ですが、もっといろんなカンボジアを見せたいと考え、私たちのできるところからやろうと現地の女性たちと一緒に始めようとしたことが起業につながっています。

ピーダーセン氏:ザ・ボディショップが創ったキレイな世界。これは内面的な美しさもあると思いますが。まず、岩田社長が考えるキレイな世界は?

社長岩田岩田氏:アニータが言ってるように、嘘をつかない世界がキレイな世界だと思います。ご質問と若干ずれてしまいますが、私がアニータから学んだことを少しお話させてください。私の経歴を見ると、転職を繰り返したり、ビジネススクールに行くなど、資本主義社会の典型ではないかと思われるしょう。ビジネススクールでは、企業は株主のためにあり、株価を高めて企業価値を最大にするものであると教えます。私の中でこの考え方がしっくりこず、ずっと会社を何のためにあるかを考えていました。アニータの影響によって、ある日突然、神の啓示のように「企業は世の中をよくするためにあるのではないか」と考えるようになりました。ザ・ボディショップはビジネススクールで教えることと、全く違うロジックで動いています。また社長として私が従業員に求めたいのは、サラリーマン的に上司の顔色ばかりを見るのではなく、アニータのように自分自身で何か事を起こす起業家精神をもって仕事をすることです。この二つをアニータから学びました。

井上氏:キレイな世界を感じるためには感受性、感性を大事にしなければいけないと思います。感性で仕事をしていく僕らがいいなぁと思うのは、笑顔、幸せそうな顔を見られることです。いい香り、きれいな花に触れ、美味しい料理やワインを味わって幸せだなぁと思う気持ちを大切にしたいです。スイカなどが開発されると便利だなぁと思うけど、幸せだなぁとは思わないわけで。もっとみんなが幸せだなぁ、ニコッとするような時間や空間を花や緑を通してもっともっと提案していければ、キレイな世界が作れるのではないか思います。

ピーダーセン氏:絵、花にあることによって幸せの度合が変わってくるような気がしますね。

井上氏:先日、ある無機質な空間に絵が一枚かかっていましたが、なぜ、こういう空間に人は絵を置きたがるのか?部屋の中には直線だらけですが、絵の中には直線はありません。人間は、あるがままの本能に即したものを絵の中に見つけるのではないでしょうか。花も同様に人に近いラインをもっています。ひとりでも多くの方に視野のどこかに、緑や花が入ってくるような環境をつくっていきたいと思います。

シンポジウムの様子青木氏:キレイといっても、クリーンと幸せという両方を実現したいですね。地球上の世界の人々、動物も含めて幸せの総量を増やしていきたいと思います。先進国で言えば、ありもしないセルライトとか、最近ではエイジングなど、大手企業がお金を儲けるために脅迫するようなマーケティングをしています。「私は毛穴が開いているから」「ブランドバッグをもっていないから」不幸だと思い込むことがあってはいけないと思います。どれだけみんながセルフエスティームを高めていけるか。地球上の反対側にいる人たちの幸せも、そんなに今の生活を変えなくても実現できるかもしれない。例えば、ちょっといい育て方をした中国の花を買うことでみんなが幸せになれることがあるかもしれません。

カフェグローブでは、できるだけ誠実に記事をつくるようにしています。政治や経済など、これまでの女性誌ではなかった分野にも力を入れています。

吉川氏:キレイと言うよりは面白い社会と言ったほうがイメージしやすいですが、「好きなことを好きと言っていいよ」とみんなが認めている社会だと思います。私自身もボランティアは心がクリーンな人がやり、ビジネスは心がダークな人がやるものだと考えていましたが(笑)。経済指標だけでなく、もっと別な見方をしてもいいのではないかと思います。カンボジア好きな私の隣にパリ好きな人がいても、お互いに尊重でき、みんなが積極的にそういうことを言えるような世界になったらいいと思います。

ピーダーセン氏:私もリュックを背負って世界一周をしたことがありますが、お金のGDPと笑顔のGDPは反比例しているということが私の旅の結論です。ボリビアの山奥、ずっと迫害を受けていたグアテマラの先住民の村々、貧しいと思われていた人々がとても笑顔で、幸せそうに見えることにびっくりしました。

さて、二つ質問があります。みなさんが大手企業で安定したポジションで働いているとして、そんなときに起業のチャンスが訪れたらどうしますか?お金もこれから自分で集めなくちゃいけないし、不安もいっぱいある。そんなときに起業する人は?― 52%の人が起業するようですね。
アニータ・ロディックのように自分が世界を変えることができると思う人は?次に、アニータ・ロディックのように自分が世界を変えることができると思う人は?― 80%くらいいますね。
パネリストのみなさん、いかがですか?

井上氏:どんな大会社でも、誰かが一歩を踏み出したことから始まっています。みなさんも、ぜひ、踏み出してほしいと思います。

青木氏:今もう一度考えても、アイディアがありチャンスがあるなら、やらないわけはないでしょう。世界を変えるために生まれてきた人生であり、世の中を変えることこそが喜びや生き甲斐だと思います。

ピーダーセン氏:ある企業で働き続けることでも、Make a difference; 変えることができるかも知れないです。お金のことが出ましたが、お金につぶれないことも、何かにチャレンジするときに大切なことではないでしょうか。

吉川氏:私は、就職活動もしていたので、悩んでいる時期もありました。起業するといきなり世界が変わると思ったけれども、実際には何も変わりません。しかし、「やります」と私が言ったから、注目が集まったり、助けてくれる人がいたりすることが、とても嬉しいと感じています。

ピーダーセン氏:「Honesty is the best image.」はビジネスをする土台だと思います。縦に志、横にオネスティ、この面積が広ければ広いほどビジネスは強いものになるのではないでしょうか。

岩田氏:ビジネスと社会貢献は相反するものではありません。ビジネスが社会貢献に寄与する例として、DVのキャンペーンの一環としてシェルターが主催する親子合宿に我々のボランティアが加わったことがありますが、交通手段や食事の手配などロジスティクスの上で、ビジネス上のスキルが大変役に立ちました。また社会貢献がビジネスに役に立つ例として、当社では就業時間内(月半日)にボランティア活動をすることを奨励していますが、こうした活動を通じて、皆会社に対するローヤルティを高めて、パッションを持って仕事をしてくれています。

心地よい高揚感の中、最後に、吉川さんが「この日心に残ったキーワードをステッカーに記入して、壁に貼ってください」と呼びかけ、多くの参加者が応じてくださいました。この170ものキーワードは下記で見ることができます。
http://wavonetportal.web.fc2.com/bodyshop.html
さらに、シンポジウムに参加して終わりにするのではなく、これをよいきっかけにするために、2週間後の11/15には有志20名あまりが集まったとのことです。何かが始まる予感がします。
写真
なお、シンポジウムの当日は、ボランティアとして早稲田大学の学生たちが、運営をお手伝いしてくださいました。開始時間前には、大隈講堂前でDVをなくしていくための「スピークアウト・メッセージ」へのご協力を呼びかけてくれたパッションある学生さんもいました。通りがかった学生さんたちも快く協力してくれて、なんと310ものメッセージをいただきました!協力してくださったみなさん、ありがとうございました。

とじる